明日は良い日

毎日が日曜日……シンプルに晴耕雨読。

素敵なおばあちゃん

あ、デイサービスのお迎えかな?


近所のおばあちゃん・Sさんは、多分90歳代。
小柄だからだけではなく、何となく可愛い感じのおばあちゃんだ。。
ゆっくりな動きながら片手に杖、もう片方の手にシルバーカー(疲れたら腰掛けられるタイプ)を押して玄関から出てきた。黒のレースのカーディガンを着て、ベージュのパンツ、小さなバッグを持って…。


細い道路の向こう側30mほどの所にSさんの家があり、庭に出ればSさん宅がよく見える。お付き合いはなく、道で出会った時に頭を下げる程度。
それだけだが、Sさんの姿、家のたたずまいを見れば几帳面でとにかく働き者だというのは見て取れる。


Sさん宅の塀は、3m幅ほどの砂利が敷かれた奥の家の私道に沿っていて、反対側は畑が続く。
10年ほど前だったか、ガリッ、ガリッ、ガリッと砂利を引っ搔くような音が小一時間続き、その音の正体を確かめようと庭に出たところ、Sさんが長い持ち手棒の付いた小さめの鍬(?)で、自宅の塀に沿った、そこそこ続くその砂利道の草を搔いていた。
音の正体に気づいたそのあと、気を付けてみれば砂利道はいつもきれいだった。


しばらくしてSさんの姿を見かけなくなり、家はひっそりと静まり返っていたから、高齢でもあるし心配していたが、4~5年前あたりからSさんを再び見かけるようになった。Sさんはさらに小さくなり、杖をつくようになっていた。
それからまた、寒い時も暑い時も、ガリッガリッガリッと草掻きの音がするようになった。
庭で草花の世話をする姿も見られたし、ごみ収集の日にはごみをまとめたポリ袋をぶら下げ、杖をついて、ゆっくりゆっくり歩く姿も見ている。その歩みだったら、往復小一時間はかかる道のりだ。


そして今。
週に何回か、きちんと身支度をしたSさんは、玄関の前に置かれた椅子に腰かけ、デイサービス(多分)のお迎えを待っているようになった。
その姿は、毅然としながらも愛らしく、そしてオシャレ。
気持ちの良い日、ごくごくたまにガリッガリッガリッと音がしたりもする。
ビックリして庭に出ると、杖を長鍬に持ち替えて小柄なSさんが奮闘している。


独り暮らしのSさんのお宅は、ヘルパーさんらしき人、離れて住む家族らしき人、親戚友人らしき人、ご近所さんらしき人、などなどビックリするほど人の出入りが多い。
一人でも独りではない。
出来ないことはどんどん増えても、甘えずに出来ることは自身でやる。
まさに理想の老後を過ごしているとみた。



あんな風に年をとれたらと自分を重ねてみるには、あまりにも素敵過ぎるSさん。
せめてどこか一つでも近づけたらと思いながら、今朝も私は、遠目にSさんをしばし眺めていた。

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