明日は良い日

毎日が日曜日……シンプルに晴耕雨読。

二人

木漏れ日の坂道を登っていく
風景も人もまぶしい空の青さに近づいていく季節
細川俊之です。


気だるげな大人の男の声で人気のあった細川俊之のラジオ番組「ワールドオブエレガンス」は、こんなふうに始まった。
かれこれ40年ほども前になるだろうか、そのころの職場では1日中ラジオがかかっていた。
お昼休憩のなんとなく和んだ雰囲気が残る時間に始まる30分番組で、音楽のセレクトが洒落ていて、週に1度だったと思うが、楽しみにしていた番組だ。


昨年の3月、250巻ほどあったカセットテープを整理し、迷いながらも思い切って150巻処分した。
今日、思い立ってさらに50巻くらいまでに減らそうとテープ収納BOXを開けると、一番奥にあった、ラベルのない1巻に目がいった。
あぁ、そうそう、ワールドオブエレガンス。
あの時のラジオを録音したテープだ。
グルグルグルーーッと猛スピードで、脳内は“あの時”40年前に戻る。


番組では月に1回、「あなたのポエム」という日があって、視聴者から投稿されたポエム3点が音楽と一緒に紹介される。
それに応募してあった。
その日、「最初のポエムは…」に続いて細川俊之が読み上げたのは、なんと、私の住所と名前だった。
採用されて放送日も知っていたから、ラジカセにテープをいれて耳を澄まして待っていたが、緊張しまくって汗びっしょりになり、よく聞こえなかったのを覚えている。



 二人 


  おかしいね、二人、さっきから同じことばかり話してる。
  目と目が合えば照れ笑い。


  おかしいね、二人、そっと寄り添うことさえできない。
  街路樹にさえぎられて邪魔するものはいないのに。


  おかしいね、二人、サヨナラの握手もできないで
  片手を上げて「じゃぁ、またね」。
  
  おかしいね、二人、大人のくせして少年のように少女のように。
  出会った日から1年半を数えるのに。


細川さんはあっさりとした感じで読んでくれた。
音楽は「結ばれぬ愛の思い出」。
ラジオのチューニングのせいでノイズだらけのテープだけれど、思い出ははっきりと蘇った。それにしても、ずいぶん可愛いポエムを書いていたんだな、34歳の私。

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